保育士の新卒の手取りは低い?給料は上がるの?求人を探すときのポイントも紹介

保育士の新卒の手取り

子どもが好きなら誰もが一度はあこがれる「保育士」というお仕事。
子ども達の笑顔に囲まれて、自分のスキルを発揮できる、やりがいのある仕事ですが、現場のなり手不足と離職率は深刻です。
その理由に「保育士の給与は薄給」というイメージが挙げられます。

新卒の保育士の手取りは、実際にはいくらぐらいなのでしょうか?
保育士が、「薄給」という話は本当でしょうか?
手取りは?ボーナスは?
公立や私立で金額が違うの?

保育士の給料のこと、とっても気になりますよね。
そこで、保育士の給与平均額や、新卒保育士の初任給、施設ごとの給与、年収などについてまとめてみました。

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新卒の場合、保育士の給与はどれくらい?

4年制大学・短大・専門学校を卒業して新卒で保育士になった場合、給与はどれくらいなのでしょうか?

保育士の平均初任給は?

まずは保育士の「平均給与」から見てみましょう。

平成27年度~平成29年度のデータによると、保育士の平均給与は約21万円~22万円となっていて、年間賞与の平均約66万円、年収として換算すると約342万円になります。
この額は、あくまでも平均的な金額で、公立保育園、私立保育園などの施設の違い、地域の違い、勤続年数や役職などによって金額は変わってきます。

これを踏まえた上で、新卒保育士の一般的な初任給は16万円~18万円が相場です。
実は保育士の給与は、多くの女性が働く他の業種の平均給与と比べると、有資格職ということもあり、あらゆる職種の中間ぐらいの金額になります。
それでも「安い」と思われるのは、労働時間の長さに対して「割に合わない」金額だから、と思われる節があるようです。

ちなみに、初任給を16万~18万円でスタートした給与は、1年~4年ほど勤務すると平均月収の20万円前後に追いつきます。

4年制大学・短大・専門学校で初任給は違う?

他業種と違い、保育士の場合4年制大学・短大・専門学校での初任給にあまり差はありません。
私立保育園などで、園の方針により、あえて差をつけるケースもありますが、それでも1万円以下の差額であることがほとんどです。

保育士になるための進学コースにお悩みの人なら、給与の面では差はないと考えておいたほうが良いでしょう。

新卒の保育士の手取りはいくら?

保育士の正規職員としての初任給は、平均とされている金額からもろもろが差し引かれた金額が支払われます。
これを「手取り給料」と呼んだりします。
新卒保育士の手取りはいくらになるのでしょうか?

手取りってなに?

「手取り」とは、給与の「総支給額」から健康保険料、雇用保険料、厚生年金保険料、所得税、住民税など差し引いた金額です。
正規職員として働くなら、新人でもベテランでも関係なく引かれる金額ですが、求人などで提示されている給与額は「総支給額」の方なので、手取り額を想定しておかないと、実際にもらう金額とのギャップに驚くケースもあります。

新卒の保育士の手取り額

自治体によって、保険料や税金は変わってきますが、例えば初任給の総支給額が18万円だとすると、内訳は以下のようなイメージとなります。

  • 健康保険料 8,000円~9,000円前後
  • 厚生年金保険料+雇用保険料 17,000円前後
  • 所得税 3,000円前後
  • 差引額合計 29,000円~30,000円前後
  • 総支給額180,000円-30,000円=手取り150,000円

あくまでも参考程度ですが、上記のような内訳で「総支給額の3万円前後差し引かれる」というイメージを持っておくと良いでしょう。

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私立と公立で新卒の手取り額に差はある?

保育園は、大きく分けると私立保育園と公立保育園があります。
私立保育園と公立保育園では、新卒の手取り額に差はあるのでしょうか?

私立保育園の給与平均

私立保育園は、公務員でなくても保育士の資格があれば就くことができます。
「私立認可保育園」「認定こども園」など業態がさまざまなので、給料もそれぞれ違いがあります。

私立保育園は別名、「サラリーマン保育士」と呼ばれるくらい、経営母体によって給料や待遇が違います。
就職先に選ぶ場合は、母体組織が社会福祉法人か、株式会社かをチェックしておくようにしましょう。

●私立認可保育園
一般的な私立認可保育園の平均給与額は約26万2,000円で、年収は約314.4万円になります。
公立保育園と比べて低いイメージがありますが、年功序列型の公立保育園と違い、序列に関係なくキャリアアップのチャンスに恵まれています。

●認定こども園
認定こども園は保育園と幼稚園を合わせたような業態の施設です。
平均給与額は約24万4,000円、年収は290.4万円と、私立認可保育園に比べると低めです。

初任給の段階では差はほとんどない

平均給与額では、2万円~3万円と差が出てしまう公立保育園と私立保育園ですが、実は初任給の段階ではどちらも16万円~17万円と、あまり差額がありません。
公立保育園が年功序列システムにより、確実に給与がアップしていきますが、私立保育園の場合や、自分のキャリアや所属している企業によっては、公立保育園より給与がアップする可能性があります。

公立保育園でも私立保育園でも、初めての給料はどちら同じくらい、と覚えておいてください。

無認可・認可外の保育園の給与は?

私立保育園の中には、認可保育園と無認可保育園があります。

無認可保育園ときくと、あまりよくない印象を受けるかもしれません。
しかし、そういった話題になる保育園は一部であり、すべての無認可保育園が悪いというわけではありません。

無認可保育園は認可基準を満たしていない保育園をさしますが、無認可となる理由はさまざまです。
例えば園庭の広さが足りなかったり、英会話の時間を設けるといったサービスを行っていたりして、無認可となっている場合があります。

ただし、無認可保育園は国・自治体から補助金が出ません。
そのため人件費を抑えることになり、けして認可保育園より高いということはなく、月給19~23万と認可保育園とあまり変わらないのです。
一方で、福利厚生などは認可保育園より劣ってしまう可能性も否定できません。

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新卒1年目、保育士と幼稚園教諭の手取り額の差はある?

保育士と幼稚園教諭で、月収の手取り額に差はあるのでしょうか?
新卒1年目が多い20~24歳の平均月収額を、比較してみました。

保育士が18.7万円。
幼稚園教諭が19.2万円。
参考:賃金構造基本統計調査

月の総支給額が18万円だった場合の保険料や税金がおよそ3万円なので、それを引いた手取り額はおよそ15万円~16万円ほどになります。幼稚園教諭の方が、少しだけ保育士よりも平均月収額が高いですが、大きな差はありません。

共働きの家庭が増えた影響などで、乳児からの受け入れが可能で預かり時間も長い保育園の需要が、年々高くなってきています。そのため、待機児童が増えている中で、幼稚園は8割が定員割れになっているといいます。厚生労働省では保育士不足の対策として、以下のような取組を行っています。

保育士の給与を2019年度は約1%改善(月額約3千円程度)します。

厚生労働省「保育士確保」より
保育士の給与(手取り額)は改善傾向にあります。今後、保育園の需要から、幼稚園教諭の給与(手取り額)を保育士が上回る可能性もあるでしょう。

保育士の初任給(手取り)学歴による差はある?

高卒、高専・短大卒、大学卒、大学院卒と最終学歴によって、保育士んぽ新卒の手取り額は変わってくるのでしょうか?

厚生労働省の調査から平成28年の医療・福祉の学歴別の初任給を確認してみます。

大学院卒  (男女平均)21万2800円
大学卒   (男女平均)19万6700円
高専・短大卒(男女平均)17万9200円
高校卒   (男女平均)15万1500円
参考元:厚生労働省  賃金構造基本統計調査(初任給)

大学院卒と高校卒では、約6万円の差があります。大学院卒の場合は、総支給額が約21万円なので、手取り額は約17万円です。高校卒の場合は、総支給額が約15万円なので、手取りが約12万円になります。高校卒の手取り額では、生活環境にもよりますが、一人暮らしを考えるとギリギリの額ではないでしょうか。
※この調査結果には、保育士だけでなく他の医療・福祉の職業も混ざっているので、保育士の新卒の初任給とはズレがあるかもしれません。

 

 

 

 

 

画像引用:厚生労働省 賃金構造基本統計調査(初任給)

しかし、職種全体の学歴別の初任給をても、大学院卒と高卒で約7万円ほど差があるので、保育士だけ特別大きく学歴による差があるわけではなさそうです。

保育士の給与は都道府県別で差がある?

都道府県によって定められている最低賃金が異なるので、地域によって給与の差が出る職業は多いです。
では、保育士の給与は、都道府県によってどれくらいの差があるのでしょうか?厚生労働省の賃金構造基本統計調査から都道府県別の保育士の平均年収を比較してみました。

1位 愛知県 約387万
2位 京都府 約380万
3位 東京都 約356万

愛知県が、最も保育士の年収が高いようです。愛知県は、公立と私立で働く保育士の給与の差をなくすために民間社会福祉施設運営費補助金という取り組みを行っています。
愛知県は、自治体が実施する制度や企業の独自の手当、福利厚生などが充実しているので、保育士の給与水準が高い傾向にあるのでしょう。

新卒で保育士になる場合は、都道府県別の給与水準も考慮してみるといいかもしれませんね。

保育士の給与(手取り)、どうして安いの?

保育士は、子どもの成長を見守ったり、安全を確保したりと大きな責任が伴う職業です。また、持ち帰りの仕事や残業などが多い場合もあり、体力的にも精神的にもハードといえるでしょう。
それにもかかわらず、新卒の保育士の平均手取りは15万ほどであり、給与が低いといわれているのはどうしてなのでしょうか?

保育士の給与が低い理由には、以下の2点が考えられます。

歴史的な側面

保育施設ができ始めたころは、保育士の仕事の役割は現在よりも非常に低かったため、給与の水準も低く設定されました。また、だんだんと保育士の役割が大きくなっていく中でも、給与の引き上げをしなくても保育士になる人が多くいたのです。そういった歴史的な背景から、保育士の給与が見直されにくかったことが考えられます。

規制緩和による影響

保育園は、もともと市町村・社会福祉法人のみが運営していました。しかし、2000年の規制緩和によって企業やNPOも保育園の経営が可能になったのです。それを受けて、人件費削減に拍車がかかってしまったことが、保育士の給与に影響した可能性も考えられます。

保育士の新卒の手取り額は他業種と比べて低いの?

厚生労働省の平成30年度の調査によると、新卒(大卒)の初任給の平均は20万6,700円となっています。そのため、新卒の手取り額は、17万円ほどです。
新卒の保育士の手取り額の平均が、15万円ほどなので、職種全体の初任給の平均額と約2万円の差があります。2万円違うだけでも、経済的な余裕は大きく変わっているのではないでしょうか?
ちなみに、看護師や理学療法士などは、新卒1年目の給与が22~26万円なので、保育士は他の専門職と比べても給与水準は高くないようです。

就職をするうえで、初任給の金額がすべてはないですが、収入は仕事のモチベーションのひとつにもなりますよね。

参考:平成30年賃金構造基本統計調査

保育士の給与(手取り)、今後は?

「薄給」のイメージがなかなか払拭できない保育士ですが、給与体系などに見直しはあるのでしょうか?
保育士の給与の今後を見てみましょう。

保育士の給与は少しずつ上昇している

内閣府で実施した2017年の調査によると、保育士の給与は「近年少しずつ上昇してきている」傾向にあるようです。
それでも下がらない保育士の離職率を改善するべく、政府は、2017年4月より「保育士処遇改善手当」を施行しました。

これまで、保育士には主任や園長以外のポストがなく、キャリアアップとして昇給するには約10年の現場経験が必要とされきました。
しかし、離職する保育士は勤続年数7~8年の中堅が多く、キャリアアップする前にたくさんの保育士が職を離れているのが現状です。

そこで、政府は勤続年数7年以上の保育士を対象に役職を設け、月額の給料に加算する「キャリアアップ制度」実施しました。
また、経験年数3年以上の保育士を対象としたキャリアアップ研修やそれ見合った昇給制度も併せて設けています。

役職手当がつくようになった

保育士処遇改善手当のキャリアアップ制度により、以下のような役職が増え、それぞれに役職手当がつくようになりました。

●副主任保育士・中核リーダー・専門リーダー
経験年数約7年以上の保育士を対象としたキャリアアップです。
条件をクリアすると、役職が与えられ月額4万円の役職手当をもらえるようになります。

●職業分野別リーダー・若手リーダー
保育士処遇改善手当では、保育経験が概ね3年以上ある保育士を対象としたキャリア研修も実施されています。
条件をクリアすると役職と月額5,000円の役職手当がつきます。

3年目も7年目も、すべての職員がキャリアアップの対象となるわけではなく、研修の対象者は保育園に在籍する職員の数で上限が決められています。
ただの年功序列の昇給ではなく、キャリアアップ研修とセットとすることで、保育士という仕事へのモチベーションを上げ、常にやりがいを持てる職場でより長く働ける環境づくりも目的の一つとなっています。

新卒1年目の保育士でもボーナスはもらえる?

新卒1年目の保育士は、ボーナスがもらえるのでしょうか。新卒1年目で手取り額が少なかったとしても、ボーナスがあれば2年目へのやる気にも繋がります。

新卒1年目の保育士が、ボーナスをもらえるかどうかは園によってまちまちのようです。新卒1年目から夏のボーナスがある園、冬のボーナスから園、寸志のみの園、ボーナスが出ない園もあります。
しかし、保育士に関わらず、新卒1年目は労働日数が少ないという理由や試用期間という理由でボーナスの支給がない会社が多いようです。
新卒1年目のボーナスは期待できないかもしれませんが、ボーナスのある園ならば、2年目からはきちんと支給してもらえるので安心してください。さらに経験年数を重ねていけば、ボーナスの支給額も上がっていく場合が多いです。新卒1年目のボーナスに左右されることなく、保育士の仕事を続けることが大切といえます。

就職先を選ぶ際は、ボーナスの支給があるか確認しておくとよいでしょう。

企業内保育園の新卒保育士の手取りは?

企業内保育園とは、従業員が就業中に自身の子どもを預けることができるように企業内や会社周辺に企業が設置している保育施設のことをいいます。企業によっては、従業員の子どもだけでなく、近隣の家庭の子どもを預かってくれるところももあるのです。
企業内保育園の給与(手取り)は、どれくらいでしょうか?

企業内保育園の求人を比較したところ、新卒の保育士の給与は、およそ20万から25万でした。手取りは、およそ16万から19万くらいになるでしょう。
企業内保育園の給与は、企業の規模によって違うため、大きな差があります。大企業の保育園の場合は、その企業の従業員と同じ水準の給与がもらえる場合もあるそうです。また、福利厚生が充実しており、残業代も出る場合が多いです。
しかし、保育園を運営する企業の景気によって給与が左右される可能性や、最悪な場合は保育園の閉鎖で職を失うリスクがあります。

病児保育士の手取りはどれくらい?

病児保育士は、病気の子どもを保育する仕事です。子どもが風邪をひいてしまったけど、共働きなどで面倒を見ることが難しいといった時に利用している人が多いといいます。クリニックなどの施設内に併設されている場合や家に訪問して保育する場合など、病児保育士といっても働き方に違いがあるのです。

病児保育士の初任給は、一般的な保育園に勤める保育士と大きな差はありません。しかし、医療法人で勤務する病児保育士は、給料も高く、充実した福利厚生を受けることができる場合が多いようです。
病児保育士は、一般の保育園のように行事や指導計画などがないので、業務量も少なく残業や持ち帰りの仕事もありません。そのため、体力的にも負担が少ないので働きやすいでしょう。
しかし、病気の子どもを預かるので、容態の急変や感染症などのリスクがあります。病児保育士は子どもと密に接することができる反面、毎回預かる子どもが変わるので、そこを負担に感じる人もいるようです。

新卒保育士の求人探しのポイントは?初任給の手取り額は重要?

新卒の保育士にとって、初任給の手取り額が多いかどうかは、重要なポイントでしょう。
しかし、求人を探すときは、初任給の手取り額だけでなく昇給ができる園なのかどうか確認することも重要なポイントです。

昇給は、保育士として仕事のモチベーションにつながります。自分の頑張りが、給与として目に見える形で評価されることは、とても嬉しいですよね。

保育士としてひとつの園で頑張っていきたいのなら、新卒の初任給が少なくても、昇給のある園を選ぶことをおすすめします。公立の園や3つ以上の園を運営しているような大きな法人の場合は、勤務年数やスキルに応じて安定した昇給が見込めるでしょう。

就職先の園を選ぶときは、初任給だけでなく昇給制度があるかもチェックしておくと将来的に安心です。また、賞与に関しても、年に何回貰えるのか、金額がそのくらいなのかなど注意して求人を探すとよいでしょう。

保育業界全体が薄給というわけではない

保育士は「手取りが少ない」「薄給」というイメージがありますが、全ての保育園の給与が安いというわけではなく、場所によっては公務員である公立保育園の保育士よりも待遇のいい施設もあります。
保育士の離職問題は政府も対策に乗り出していることもあり、今後も改善される可能性があります。

また、併せて長年解消しない待機児童問題にも絡み、保育士の需要は常に高く、求人を出す方も給与面を改善しているケースもよく見られます。
例えば有限会社COCOが運営するドリームキッズは、スキルに応じて給与がアップしているというメリットがあります。
昇給は年に1回、賞与(基本給3か月分)は年に2回支給されます。また、経験者優遇や、各手当が充実している点も見逃せません。
保育士の求人を探す時は、基本給の額面だけでなく、待遇や手当などもしっかり見極めて、自分にピッタリの求人を選んでください。